Journal : 宙博ジャーナル

 

2009年12月3日から6日までの4日間、東京有楽町の国際フォーラム展示場で宙博は開催されました。会場を「宇宙天文」と「環境エネルギー」に分け、それぞれの分野の先端研究やビジネスを紹介したこの新しいイベントは、延べ入場者数26,372人を集め、大成功のうちに終了しました。当初の目標入場者数が15,000人だったことを考えると、いかに想定を上回る人々がこの博覧会に興味を持ち、足を運んでくださったかが分かります。

 

開催期間中は、各分野の専門家がそれぞれのブースに立ち、サイエンス・ナビゲーターとして展示内容を説明したり、来場者の質問に答えたりしました。また、レクチャーフィールドでは連日、科学や産業分野の第一人者が壇上に立ち、新しい研究の成果や、産業分野への新技術の応用などを披露しました。興味深かったのは、暗黒物質や宇宙の果てといった難解なテーマの話に、大人から子供までが真剣なまなざしで耳を傾けていたことです。そして、質問の時間には多くの人が手を挙げ、研究者が感心するような鋭い質問を投げかけていました。

 

宙博の狙いは、まさにこういった人々の「なぜ」に答えようとするものでした。なぜ宇宙はあるのか、どこまで広がっているのか、温暖化はどうなっているのか、それを解決する技術はあるのか。こういった基本的な問いかけを柱に展示を組み立て、天文観測や宇宙開発から、素粒子研究、超伝導や電気自動車やITを利用した省エネなどの産業分野の新しい取り組みまでを紹介しました。「なぜ」という問いと、それに対する「答え」というシンプルな構成が、予想を上回る来場者を集めた要因の一つだったといえるかもしれません。

 

そう、2009年の宙博開催で分かったこと、それは、人々は知りたがっているという事実です。天文学や物理学は急速な進歩をとげ、その研究は宇宙誕生の瞬間にまで肉迫しようとしています。すばるやハッブルといった望遠鏡はこの世の果てをのぞき、数学者は最もシンプルな方程式で、世界の諸現象を記述しようとしています。なのに、そういった分野の研究があまりにも高度化し、難しくなりすぎたため、一般の人との距離が生まれ、その距離はどんどん広がる一方です。人々は知りたがっているのに、答えがない。いや、答えはあるのですが、難しすぎて分からない。この「なぜ」と「答え」の間にあるギャップを埋めたのが、宙博でした。そして、2010年も宙博は、多くの研究や取り組みを紹介し、人々の「なぜ」に答えていきます。

 

しかし、なぜ「なぜ」に答えることがそれほど大切なのか。その背景には、物理科学の進歩が新たな産業を生み、その産業が社会の構造を変え、人々の意識を変えてきたという歴史的な事実があります。科学や産業の最前線で何が起きているか、それを知ることは、次の時代、つまり未来がどうなるかを知ることに他なりません。そして、宙博に興味を持ち、訪れてくれたような人々が、科学技術や産業分野の最前線で起きている変革を知り、心からその意味を理解したとき、世界は大きく変わるのです。宙博は、新たな時代を開く扉の役割を果たそうとしているのです。

 

次回の宙博ジャーナルでは、宙博2010のテーマ「宙から始まる環境エネルギー革命」を取り上げ、これまで科学技術がいかにして産業を発展させ、社会や人々の意識を変えて来たか、また、最先端の研究や技術が今後の社会にどのような影響を与え、人々の意識を変えていくのか。
そのあたりにフォーカスを当てて、考えていきたいと思います。